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財団法人スポーツ安全協会が実施している「スポーツ等活動中の傷害調査」をもとに、合気道や他の武道の事故の発生率を整理した。その結果、武道の事故の発生率は、全体と比較して必ずしも高いわけではないことがわかった。特に、合気道の事故の発生率は柔道や空手と比較して低く、全体と比べても低い。
ただし、本調査は、あくまでも保険加入者のみを対象とした調査であり、活動内容毎に保険の加入率が異なる可能性があることに注意が必要である。
本稿は財団法人スポーツ安全協会が実施している「スポーツ等活動中の傷害調査」をもとにしている。
この調査は、協会の事業である「スポーツ安全保険」加入者の傷害等の事故を調査したものであり、昭和52年に第1集が発行された後、ほぼ2年おきに発行されている。
「スポーツ等活動中の傷害調査」の概要は以下の通りである。
まず「スポーツ安全保険」について整理する。「スポーツ安全保険」は、スポーツ活動、文化活動等を行うアマチュアの団体やグループを対象としており、団体の種類により、1種、2種、3種に分かれている。
区分 | 内容 |
---|---|
1種団体 | 2種3種団体以外のスポーツ団体及びその他の生涯学習関係団体 |
2種団体 | 短大、大学または官公庁、会社等の運動部で競技別大学(学生)連盟等、もしくは競技別実業団連盟に登録または加盟している団体。 |
3種団体 | 山岳登はん、ボブスレー、グライダー操縦、スカイダイビング、スキューバダイビング、ハンググライダーなどを行う団体 |
調査対象年度中に保険に加入した者、同年度中に傷害を生じ、傷害保険金の支払を受けたもの。つまり、あくまでも保険の加入者を対象とした調査であり、スポーツ活動全体を対象としたものではないことに注意が必要である。
これらの中から、1種については10%の抽出調査、2種及び3種は悉皆調査(全数調査)。
本稿では、刊行されている報告書のうち以下のものを利用した。
これら報告書の「別表II 男女・年齢別傷害発生率 (3)活動内容別」のうち、以下の活動内容のデータを利用した。全体と合気道のほか、主な武道を挙げている。また、比較のため、加入者が比較的多いテニスと水泳を選択した。
加入数や発生率は、全て1種、2種、3種の合計である。
まず、平成8年度における保険の加入者数を以下に示す。全体では約920万人である。武道では剣道、柔道、空手が10万人を超えている。合気道は2万6千人である。
加入者数計 | |
---|---|
全体 | 9,193,682 |
テニス | 115,545 |
水泳 | 228,236 |
剣道 | 344,595 |
空手 | 100,542 |
少林寺拳法 | 49,102 |
柔道 | 108,585 |
合気道 | 26,538 |
平成8年度のデータをもとに、加入者の性別・年齢別を活動内容別に示すと以下のようになる。
まず性別についてみると、全体では男女比がおよそ6:4だが、武道ではいずれも男性が8割前後となっている。武道の中では合気道で男性が73.9%と比較的女性が多くなっている。
次に年齢別についてみると、全体では、20歳以下が半数を占めていることがわかる。41歳以上も3割弱存在する。テニスでは21-40歳が4割近い一方、水泳では10歳以下が半数を超えている。
武道についても、10歳以下が4割~5割を占めるなど、子供が多い。20歳以上は15%程度が多いが、柔道では23.2%と多く、さらに合気道では36.4%に及ぶ。これは剣道の40.6%に次ぐ。
整理すると、合気道の加入者数は、
|
男性(A) |
女性(B) |
||||||||
-10 |
11-20 |
21-40 |
41- |
男計 |
-10 |
11-20 |
21-40 |
41- |
女計 |
|
全体 |
19.1% |
12.5% |
14.6% |
15.5% |
61.6% |
9.5% |
6.4% |
10.6% |
11.8% |
38.3% |
テニス |
2.5% |
5.5% |
16.5% |
16.9% |
41.3% |
5.3% |
8.1% |
24.2% |
21.0% |
58.7% |
水泳 |
24.9% |
7.7% |
3.0% |
3.9% |
39.5% |
26.1% |
8.1% |
7.7% |
18.6% |
60.5% |
剣道 |
28.8% |
23.0% |
7.3% |
16.1% |
75.2% |
8.8% |
8.7% |
4.5% |
2.8% |
24.7% |
空手 |
33.9% |
42.4% |
7.6% |
3.0% |
86.9% |
8.6% |
3.1% |
0.9% |
0.6% |
13.1% |
少林寺拳法 |
42.8% |
26.8% |
8.3% |
5.0% |
83.0% |
9.7% |
5.5% |
1.5% |
0.3% |
17.0% |
柔道 |
30.8% |
28.6% |
11.8% |
9.2% |
80.4% |
9.2% |
7.8% |
1.4% |
0.7% |
19.2% |
合気道 |
31.9% |
16.0% |
13.5% |
12.5% |
73.9% |
8.6% |
7.1% |
6.5% |
3.9% |
26.1% |
男女計(A)+(B) |
不明 |
||||
-10 |
11-20 |
21-40 |
41- |
計 |
|
28.6% |
18.9% |
25.2% |
27.2% |
99.9% |
0.1% |
7.8% |
13.6% |
40.7% |
37.9% |
100.0% |
0.0% |
51.0% |
15.8% |
10.6% |
22.5% |
100.0% |
0.0% |
37.7% |
31.6% |
11.8% |
18.8% |
99.9% |
0.1% |
42.5% |
45.5% |
8.5% |
3.5% |
100.0% |
0.0% |
52.6% |
32.3% |
9.8% |
5.3% |
100.0% |
0.0% |
40.0% |
36.4% |
13.3% |
9.9% |
99.6% |
0.4% |
40.5% |
23.1% |
20.0% |
16.4% |
100.0% |
0.0% |
平成4年度、平成6年度、平成8年度の事故の発生率を示す。
年度によってばらつきがあるが、以下のようなことがわかる。
年齢層別の発生率について詳しく見ると、平成8年度について以下のようになっている。
合気道の発生率は16歳以上について全体と同じ、15歳以下について全体より低い。一方、空手は10代後半から、20代、30代の発生率が著しく高く、柔道も10代、20代の発生率が高い。
以上のデータから、武道、合気道の事故について以下のようなことがわかる。
ただし、これらの結果の解釈には、以下の点を考慮することが必要と思われる。