(一社)氣と丹田の合氣道会 楽心館

合気道的発声論:アン・ソフィー・フォンオッターの歌声に学ぶ、歌と身体の深い関係

突然だが、アン・ソフィー・フォンオッターという北欧出身の歌姫をご存じだろうか。

メゾソプラノの第一人者で、オペラからポップスまで何でもござれ、プロ中のプロ。

一度ラジオでその美声を聴いたのがきっかけで惹きつけられ、CDを数枚購入して拝聴しているのだが、聴くほどに・・素晴らしい声の秘密が気になってくる。

圧倒的な爆発力を聴かせる”剛剣”の声楽家は多いが、彼女はむしろ、ささやくような声、柔らかいコントロールに魅力を感じる。

力みのない声で、じわーっと圧がかかってくる表現の豊かさが、正面からくるのでなく、どこからか来るようで、それが「合気道的」だと感じるのは私見も含めてだが。

発声も身体運動だから、武道と通底する術理があって不思議はない。

もちろん、呼吸を最終的に声に変換するのは声帯と口腔だが、それは、武道で言えば手先指先の端末にすぎまい。

・・そう、秘密は、呼吸をコントロールしている胸・腹の奥にある。

彼女の歌を聴いていると、4オクターブもの声を操る胸腹内部の動きが見えるような気さえする。

絶妙な息を生み出すのは、大腰筋をはじめとする深層筋と、それに連動して上下する横隔膜、つまり、上丹田、中丹田、下丹田と使い分けられているのだと推察。

むろん、構えも、軸がしっかりしていて、高音部も低音部も力みがない。

深層筋をいかに柔らかく使っているかがわかる。

声の強弱は、足の裏から膝腰を通った大地のエネルギーと、天のエネルギーを自在にふりわけて使っているのだ・・と想像。

息そのものがエネルギーの塊でもあるが、その結果、声帯だけが振動しているのではなく、横隔膜も腹腔も、肋骨や背骨までが振動しているに違いない。

発声の陰に、ゆるみがあり、入り身があり、接点を通じて気が通り、圧が継続的にかかる。

幾千、幾万の聴衆は、耳を接点にして彼女に技をかけられ、軸を崩され、ついには気持ちよく膝を屈せざるを得なくなる・・つまり、感動せずにはいられない。

そんな妄想をしながら聴いていると、合気道の様々な技が想像させられるから不思議だ。

聴衆を相手に技を掛けているといってもあながち見当はずれではないだろう。

ただただ脱帽。(合気道的な歌姫、youtubeででも、聴いてみてください)

ともあれ、プロならずとも、カラオケが好きな諸氏は、自分が歌っている時、呼吸の仕方と声が連動していることに気付くはず。

初心者は、どうしても口だけしか意識できず、肩に力が入り、喉の筋肉をしぼって声帯を力任せで震わせるのがわかる。

一方、カラオケでもベテランともなれば、腹から声を出すという意識が多かれ少なかれ芽生えていることだろう。

それが、術理まで解して発声できるようになれば、街角のスターになるのもあながち夢ではないかも。

きっと、合気道をやってるみなさんは、日頃からちょっと発声の素振りをしていれば足裏から膝腰、胸から腹の深層筋を意識的に使えるのではなかろうか。

表層筋は力を抜き、下半身と丹田を主体に息を使い、どんな歌もやわらかくやわらかく歌えば、それなりになるはず。

ただし、音感は別物だから保証の限りじゃないけど。

こんど、カラオケのマイクを握る時は、合気道を稽古するつもりで挑戦してみよう・・っと。

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