(一社)氣と丹田の合氣道会 楽心館

居酒屋もこれすなわち道場──合気道が教える日常の力加減とコミュニケーション術

お久しぶりです。

シニアな頭ですから、どんな技を稽古しようと、相変わらず、基本を体の中で繰り返し確かめる・・毎回そんな、牛の胃袋のような時間が流れています。
(先生はきっと、もどかしいことでしょう)

いつの間にか、新人の門弟も増え、基本にかえるにはいい機会です。
でも、微妙に、軸の感じ方や呼吸、ゆるみや丹田の上下の使い分けなど、始めた頃に比べれば、体の割り方がずっときめ細かく感じられる今日この頃。
これだけでも、合気道をはじめた甲斐がありました。はい。

稽古もさることながら、
合気道の術理がいかに普段の生活場面でも汎用性が高いかを繰り返し、この稿でテーマにあげてきました。
合気道は、普段の暮らしの中で生きる、
その思いは、ますます強まっています。

例えば、
先生に口酸っぱく言われ続けてきた基本、
(強い・速い・重い・・じゃない。一挙動、加速しない、等速直進運動、柔らかく・・)
その一点だけでも、日頃の様々な場面でひんぱんに弊害を目撃、体験します。

無論、
武道的な意味では、(強い・速い・重い)(反動つける・加速する)といった”力づく”の動きは、相手に読まれ、警戒され、却って抵抗を招くわけですから、
どんな技も意味をなさないというわけです。
皆さんもう、いわずもがなですよね。

先日、
電車の向かい側の席で、若いママさんが、4、5歳の娘に、
大きな声で「どうして、いうことを聞けないの!」
「いつもあれほど言ってるでしょ、ママのことを信用できないの!・・・」
ママがを荒げるほど、娘の泣き声は増すばかり。
感情的に力を入れるほど逆効果になる、よくある光景ですよね。

そんなやりとりを見ていて、
(ああ、力づくが逆効果なわけがこれだよな)と、絵に描いたように見えた思いでした。
自分の理屈だけ、大声で押し付けるのは、筋肉の力でグイグイと技をかけに行くのとおんなじ。
しかも、上から目線で、反動はつけるわ、加速するわ・・のママは、泣き声に余計イライラするばかり。
娘は、ママの言い分以前に、力づくに恐怖してしまって、心で耳をふさいでいたにちがいありません。

娘に言い分をわかってもらうには、逆に、小さな声で、笑みでも浮かべ、(柔らかい接触)で言い聞かせてあげないと、
イヌ・ネコだって耳をふさぎたくなりますよね。

実はこれ、
居酒屋トークでもしょっちゅうあります。
仕事で疲れて帰ってきて、カウンターに並んだ者同士、
お互いストレスもたっぷり抱え、酒に癒しを求めます。

ところが、酒がまわってくると、ゴルフや政治の話で、だんだん熱を帯びてくる。
声が大きくなり、キーもあがります。
Aさん、鼻の穴が膨らんできて、(オレがオレが・・)のアクセルを加速。

そうなると、聞く方の周囲はたまりません。
Aさんの言うことは正論かもしれないのですが、言ってる内容以前に、(オレがオレが攻撃)につい、耳をふさぎたくなりますよね。
コミュニケーションの技が、ただ(痛い)だけなんです。

顔をそむけたりすれば、さらにAさんのアクセルは全開。
こうなると、聞く側は反発心がわき起こり、Aさんの言い分に水を差したくもなります。
そうなると、Aさんは余計ムッとして、なおさら声を張り上げることになり・・
あ~あ、せっかくの酒がみなさん、不味くなる。

はい、ここでも、力づくは逆効果なんですね。
自己主張だけを押し通す・・
知識のひけらかし、自慢話、威張る、押し付ける・・
いずれも、ペケなことは、おわかりですよね。

ただ、相手をねじ伏せたいだけなんですね。
酒の席でも、コミュニケーションは、伝わってなんぼのもの。
相手が(その先ももっと聞きたい)とおもわせてこそのコミュニケーション技です。

そのためにはまず、周囲の言い分にも耳を傾け、
自説ほど、穏やかな声で、笑って話しかけるくらいが、技の基本です。
柔らかく(接触を保つ)ことに他なりません。

居酒屋トークにせよ、妻との会話にせよ(これは手強い)、職場でのやりとりにせよ、合気道の稽古とおんなじだと思ってまちがいありません。

むしろ、騒々しい居酒屋でのトークで、周囲が一番耳を傾けたのは、Bさんがささやくような声で発した言葉でした。
(お酒って、なんでこんなに旨いんだろうね・・)

みな、(え、何、なんていったの?)と耳を集中させた時、
おもむろに話した内容が、その日最も伝わったコンテンツでした。
(ゆるみ)みたいなものかな。
噺家さんなどおしゃべりの達人は、みな承知しています。
話のポイントになると、必ず、声をさげます。
時には、ささやくくらいになります。
その方が、聴衆の耳が感度があがるのを承知だからですね。
二教の掴み手と同じですよね。

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