戦略的思考の欠如がもたらした代償
― コロナ禍における日本の失敗と武道家としての選択 ―
はじめに:日本社会に足りない「戦略的視点」
非常時において本当に問われるのは、「瞬間的な反応の速さ」ではなく、長期的な視野をもった判断=戦略的思考です。命か、経済か――そういった単純な二択を迫る時代ではありません。コロナ禍における日本社会の反応は、その点で明らかにバランスを欠いていました。今回は、武道道場「楽心館」を主宰していた立場から、コロナ禍における日本の対策の本質的な失敗と、私たちがどのような思考で行動したかを、国際比較も交えてお伝えします。
「感染拡大」よりも深刻だった、日本の“過剰反応”
- 医療崩壊の危機
- ロックダウンや緊急事態宣言
- 経済活動の停止・失業の増加
- 学校の休校・リモート学習
- 孤立・不安・差別の拡大
感染による直接の死ではなく、これらの副次的な社会的ダメージこそが、コロナ禍の本質だったのです。
楽心館の判断:恐怖に呑まれないために
私は当時、こう考えました。「日本人の特性を考えれば、感染症による直接的な死者は比較的少ない。だが、過剰反応による社会的損失の方が深刻になるだろう」
そこで、私たちは「平静に生活を続けること」が最大の社会貢献だと考えました。
- 稽古の継続(希望者のみ参加、休む判断も尊重)
- 稽古会場の感染状況を常時発信
- 緊急事態宣言下も、本部道場は無休で活動
- 「不安な方は休んでください」という明確な発信
感染した者が加害者、させられた者が被害者という構図が生まれた。これは間違っている。感染は基本的に不可抗力であり、我々が恐れるべきはウイルスそのものではなく、それによって社会が壊れることだ。
国際比較:日本の“成功”と“見落とし”
🧪 死亡率の比較(100万人あたり)
国名 | 死亡者数(100万人あたり) |
---|---|
🇺🇸 アメリカ | 約3,411人 |
🇮🇹 イタリア | 約3,115人 |
🇫🇷 フランス | 約2,547人 |
🇸🇪 スウェーデン | 約2,262人 |
🇰🇷 韓国 | 約665人 |
🇯🇵 日本 | 約577人 |
確かに日本の死亡率は低く、命を守る施策としては成功したように見えます。しかし――命を守った代償として、次世代の命が削られていったのです。
📉 出生数の比較(2020年→2023年)
国名 | 減少率(約) |
---|---|
🇯🇵 日本 | 約14%減 |
🇸🇪 スウェーデン | 約4.1%減 |
🇰🇷 韓国 | 約8%減 |
🇩🇪 ドイツ | 約4.5%減 |
🇺🇸 アメリカ | 変化なし |
日本の対応は、「命を守る代わりに、未来を殺す」という選択になったのではないでしょうか?
どちらが“戦略的”だったか
観点 | 日本 | スウェーデン |
---|---|---|
死亡率 | 低い(成功) | 高い(リスク許容) |
社会活動 | 自粛・制限 | 継続重視 |
出生率 | 大幅減少 | 軽微な減少 |
将来的国力 | 大きな減衰 | 継続可能性あり |
スウェーデンの対策が完璧だったとは言いません。しかし彼らは、「すべてを守ることはできない」という現実の中で、どのリスクを取るかを戦略的に判断したのです。
次の危機のために、いま考えるべきこと
コロナ禍の本質は「ウイルスとの闘い」ではなく、自らの感情・同調圧力・過剰反応との闘いだったのではないでしょうか。
私たちが未来に備えるなら、必要なのは単なる「対応力」ではなく、「何を守るべきか」「何を犠牲にすべきでないか」を冷静に選ぶための戦略的思考です。
「平静を危機として、危機を平静として身を処す」
これは武道の言葉であり、これからの社会を生きるすべての人への指針でもあると信じています。
実際の対応記録と、社会への立場表明
新型コロナウイルスに対する楽心館の責任
2020年8月27日
弊道場へご参加の指導員・お稽古人の皆様
一般社団法人 楽心館
代表理事 石川 智広
(通達文の内容をこの中に収録し続けます)