(一社)氣と丹田の合氣道会 楽心館

長尾全祐による大東流継承と合氣之術の実践

武田惣角から山本角義へ──合気の本質と大東流の継承記

※本稿は、会津藩流大東流合気柔術・小野派一刀流剣術・無限神刀流居合術 教授代理
長尾全祐一刀斉角全 先生の記録・証言をもとに構成されています。

長尾全祐(一刀斎角全)|会津伝大東流合氣柔術 正統継承者

長尾全祐師範が門弟の腕相撲に手を添える稽古風景

長尾全祐先生(長尾一刀斎角全、1938年生まれ)は、武田惣角最後の内弟子である山本角義先生から会津伝大東流合氣柔術、無限神刀流居合術、会津藩伝継小野派一刀流剣術の奥義を正統に受け継いだ武術家です。

山本角義門下の高弟として三流派すべての秘伝を授けられた長尾先生は、その確かな継承により大東流合氣柔術山本角義派の宗家(神刀柔進会)として現在も活躍しており、古武道の実戦性を追求する門人たちに秘伝の技を伝えています。

武田惣角直伝の合気の秘術と真剣術(実戦的剣術)を併せ持つ稀有な系譜を受け継ぐ長尾先生の指導は、「本当に技がかかる武術」を探求する方にとって大きな魅力と言える。

山本角義から継承した三流派の極意

長尾全祐先生は昭和45年(1970年)に山本角義門下に入門し、12年間にわたる修行で山本先生から厚い信頼を得ました。昭和52年(1977年)3月3日、長尾先生は無限神刀流居合術の教授代理を許され、続く昭和56年(1981年)3月3日には大東流合氣柔術の教授代理並びに秘傳奥儀之事(皆伝)を授与されています。この時、長尾一刀斎全祐(長尾一刀斎角全)という称号を許され、以後正式に山本角義の技法を継承する代表者となりました。山本先生が武田惣角から継いだ合氣柔術・剣術の全伝を任された人物は長尾先生ただ一人であり、まさに三流派の正統後継者としてその系譜を体現しています。

山本角義先生は武田惣角から「お前に総ての武術を伝授する」とまで言われた唯一の門人であり、生涯でただ一人、合氣の秘法と真剣術(実戦の剣術)を直接継承しました。長尾先生はその山本先生から直接薫陶を受けた最後の高弟であり、大東流合気柔術、無限神刀流居合術、小野派一刀流剣術という古武道三流派すべてを伝承されています。

山本角義没後、長尾先生は北海道苫小牧にて神刀柔進会を創設し(三流派の教授を開始、平成4年)、以降現在まで各地で後進の指導に努めています。その継承の正統性は、大東流合氣柔術山本角義派の宗家的立場にある長尾先生自身の存在によって明確に証明されています。

合氣の術と剣技の特徴 — 「本当に技がかかる武術」

長尾先生の教える合氣柔術最大の特徴は、「力を抜く」合氣の術によって相手を制する点にあります。筋力に頼らず丹田の力と体捌きで相手のバランスを崩すその技は極めて実践的です。

また、長尾先生の流派では剣術と柔術の一体化が重視されていることも大きな特徴です。他流派では徒手の技のみで稽古する場合もありますが、長尾先生の系統では無限神刀流居合術と小野派一刀流剣術を併伝し、剣の理合を通じて合氣の奥義を深く理解します。

実際、長尾先生の門下では「大東流を習得するには、居合術の身使い・小野派一刀流の手の内を通して体を練り上げることが必要不可欠である」と説かれており、剣の動きを修めることで身体操作と構えに磨きをかけ、合氣の術の威力を高めていきます。

剣術や居合から合氣を学びたいと考える武道家にとって、剣を通じて培われる身体感覚と合氣の融合により、従来の合氣道や柔術では得られない独自の上達プロセスが用意されています。

現在の活動と指導体制

長尾一刀斎全祐師範と平岡一刀斎祥淑師範の並び立つ姿

長尾先生は現在、神刀柔進会宗家として国内外で精力的に武術指導を続けています。神刀柔進会の本部道場(清進館)は静岡市清水区に設置されており、そこを拠点に千葉県や愛知県など全国各地で教授代理(公認指導者)による稽古会が開催されています。長尾宗家ご自身は北海道苫小牧市在住ながら、各地の講習会や演武会を通じて門人を直接指導し、その高弟たちが地元道場で定期的な稽古を担当する体制が敷かれています。現在は静岡の平岡祥淑師範(長尾門下生)が中心となり本部道場を運営していますが、長尾先生の監修のもとで三流派の伝承が一貫して守られています。

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