(一社)氣と丹田の合氣道会 楽心館

小学生が語った「将来の夢は合氣道の師範」|子どもの習い事と夢を育てる教育

「将来の夢は合氣道の師範」──小学3年生の言葉から考えた子どもの成長と習い事の意味

稽古の合間、小学3年生の女の子が突然こちらを見て、こう言いました。
「私の将来の夢は、合氣道の師範になることです」

その言葉を聞いた瞬間、胸の奥がじんわりと温かくなりました。
子どもは成長の中で夢を何度も変えていきます。数年後には別の夢を語っているかもしれません。
それでも今この瞬間、「合氣道」が未来を描く一部になっていること。
指導者にとってこれほど嬉しいことはありません。

おしゃべり好きだけど、技はまっすぐ

この子は稽古の最中、よく話しかけてくれます。
「先生ね、今日学校でね…」
「あのね、聞いてほしいことがあるんだよ」

話し始めると、目を輝かせて止まらなくなる。
その姿は、まるで学校の放課後をそのまま持ち込んだようで、道場が安心できる居場所になっていることを感じます。

けれど不思議なことに、技に入る瞬間だけはスイッチが切り替わるのです。
雑談の途中でも「はい、やるよ」と言うと、姿勢がすっと整い、手取りの感覚を一度で覚える。
動きの質も良く、集中力が高い。
「おしゃべりだから稽古に身が入っていない」という先入観を簡単に裏切ってくれる子です。

指導者としての葛藤

とはいえ、私はいつも悩みます。
「雑談を止めて集中させた方がいいのか」
「子どもらしさを受け入れてのびのびやらせるべきか」

合氣道を「子どもの習い事」として考えると、親御さんはきっと「礼儀」「集中力」「続ける力」を求めているでしょう。
単に「楽しいだけ」で終わってしまえば、家庭からの信頼も得られません。

一方で、厳しすぎれば「もう行きたくない」となってしまうのも現実です。
特に低学年の子にとって、「楽しい」ことは習い事を続けるための大前提
その中にどう真剣さを織り交ぜていくかが、指導者の腕の見せどころです。

楽しいからこそ育つ“非認知能力”

最近の教育学では「非認知能力」という言葉がよく使われます。
テストの点数や計算力ではなく、粘り強さ・協調性・感情のコントロールといった、数値化できない力のことです。

合氣道の稽古においても、この非認知能力が大きく育ちます。
例えばこの子の場合、
・好きなおしゃべりを中断して技に切り替えられる「切り替え力」
・先生や仲間の話を聞いて合わせる「協調性」
・失敗しても笑ってもう一度やってみる「やり直す力」

こうした力は、将来どんな道に進んでも大切な土台になるでしょう。
夢が変わったとしても、合氣道で培った力はその子の人生を支えるのです。

親の願いと子どもの姿の間で

指導者として難しいのは、親御さんが望む姿と、目の前の子どもの姿にギャップがあるときです。
親は「集中してほしい」「もっと礼儀正しく」と願う。
けれど子どもは「先生に話を聞いてほしい」「一緒に笑ってほしい」と思っている。

私はその両方を大切にしたいと考えます。
子どもの“今”を受け入れつつ、親が願う成長へと自然に導く。
それは簡単ではありませんが、武道指導の醍醐味でもあります。

夢に寄り添うということ

「将来の夢は合氣道の師範」──その言葉は、一時的な気まぐれかもしれません。
けれど、その夢を語れること自体が素晴らしいことです。
子どもにとって夢を語ることは、自分の未来を想像し、今の自分を映し出す練習だからです。

だからこそ私は、その言葉をただの冗談にせず、真剣に受け止めたいと思います。
「君がそう思ってくれることが嬉しい」
そう伝えることで、子どもは自分の存在を認められたと感じ、さらに前に進む力に変えていくのです。

まとめ|読者への問いかけ

子どもが「将来の夢」を語ったとき、それは未来を描くと同時に、安心して自分を表現できる環境がある証拠です。
習い事や家庭での関わりにおいて、私たち大人ができるのは、夢を語れる環境を守ること。そして、その中に少しずつ真剣さを育てることではないでしょうか。

あなたのお子さんが夢を語ったとき、あなたはどう応えますか?
「夢を育てる教育」として、家庭や習い事でどんな環境を用意してあげたいでしょうか。

0 0
Article Rating
申し込む
注目する
0 Comments
最も古い
最新 高評価
インラインフィードバック
すべてのコメントを見る
0
あなたの考えが大好きです、コメントしてください。x
上部へスクロール