夢を語る少女へ──継続は、ただの努力じゃない
「合氣道の先生になりたい」と話してくれた、小学一年生の女の子がいます。
その言葉を聞いて、心がふわっと温かくなりました。
こちらに気を遣ってくれたのかもしれません。でもそれでも構わない。
そう言ってくれたことが、ただただ嬉しかったのです。
けれど私は、こうも思いました。
子どもたちにはそれぞれ、自分の道を見つけて歩んでほしい、と。
だからこそ、こう伝えました。
「先生になるには、よほどのご修行をなさらないといけませんよ」と。
夢を叶えるには、“続ける”ことが必要です。
けれど、「継続は力なり」と言われるその言葉の本質は、単に努力を積み重ねることではないと私は考えています。
中村憲剛の挫折と再発見
たとえば、サッカー元日本代表の中村憲剛選手。
小学生のときから東京都選抜で活躍し、将来を嘱望される選手でした。
ところが関東選抜大会では、思うようなプレーができず、彼はクラブチームを辞めてしまいます。
なぜか?
それまでの彼は、「ドリブルこそが自分のサッカー」と信じていました。
しかし上には上がいた。
身体の大きさ、スピード、フィジカルの強さ。
通用しない現実に、恐怖を感じたそうです。
そこから彼は、自分のサッカーを見つめ直します。
「パス」や「ポジショニング」に自分のスタイルを切り替え、再び這い上がったのです。
そしてついには、36歳でJリーグ最年長MVPに輝き、ギネス記録にも名を刻みました。
千住真理子の沈黙と再出発
もう一人、バイオリニストの千住真理子さん。
11歳で名教師・江藤俊哉氏に師事し、12歳でプロデビュー。
コンクールでも数々の受賞を重ねます。
順風満帆に見えるその歩みも、20歳のときに止まります。
彼女は突然、バイオリンから離れたのです。
師はこう語りました。
「あなたの技術はすでに完璧だ。だからこそ、これからは自分の芸術と向き合わなければならない。一度でいい、私を感動させてみなさい」。
彼女は2年間、学業に専念します。
離婚も2度経験しました。
“完璧”を超えた先に、初めて「自分だけの音楽」が見えてきたのでしょう。
挫折は、再定義の入り口
このお二人に共通するのは、ただ続けたのではなく、いったん止まり、見つめ直し、自分の「意味」を掘り下げたことです。
そうして見つけたスタイルは、誰にも真似できない、その人ならではの“力”になっていく。
夢を語った少女のその後
さて、あの一年生の女の子の話に戻ります。
彼女の夢が続いているかどうか、しばらくしてから尋ねてみました。
変わらぬ気持ちを見て、私は一つの問いを投げかけました。
「夢の実現や成功の“反対”って、何だと思う?」
彼女は少し考えてから、「失敗!」と答えてくれました。
私は笑って言いました。
「違うよ。失敗はね、成功に一番近いところにあるんだよ。
本当の反対は、“チャレンジしないこと”だよ」と。
本当の「継続」とは何か
継続とは、ただ続けることじゃない。
自分と向き合い、自分の道を問い続けること。
時に止まり、時に迷いながらも、それでも一歩を踏み出し続ける力こそが、“本当の継続”なのだと思います。
その先にこそ、夢は現実になっていくのかもしれません。