武道家として大晦日に想うこと

武道家として大晦日に想うこと

私は、宗教家と武道家の違いを、次のように考えている。
「静の中に動を見る」のは宗教家の得意とするところであり、
「動の中に静を保つ」ことこそ、武道家が生涯をかけて求める境地である。

阿波研造に見る宗教的静観と武道的実践

私が崇敬する弓道家、阿波研造の言葉にも、これと同趣旨の思想が見られる。
宗教家はしばしば「一大事とは今日只今の心なり」と説く。
今この瞬間の心の在り方こそが、すべてに通じる――それは確かに真理の一面であろう。

武道家に求められる「静」とは何か

しかし、武道家に求められるのは、そこに留まらない。
武道家とは、危難が現実として迫ったとき、いかに太極の視点から全体を捉え、
戦略を立て、感情に呑まれることなく戦術を実行できるかを、身をもって示す存在であると私は思っている。

心を整えるだけでは足りない。
世界がどう動き、力がどこに集まり、どこから崩れるのかを見極めた上で、
なお静かであること――それが武道の静である。

大晦日にあたっての警告

さて、大晦日という節目にあたり、今年から未来へ渡って、
武道家の立場から、どうしても警告しておきたいことがある。

歴史に見る大戦の発火点

第一次世界大戦はヨーロッパを発火点として始まり、
第二次世界大戦もまたヨーロッパで火がついた。

現在進行中の戦争と第三次世界大戦の前段階

現在進行中の一連の武力衝突は、将来「第三次世界大戦の前段階」と位置づけられる可能性があるが、その特徴は、単一の地域ではなく複数の火種が同時多発的に連動している点にある。

中東から東南アジアへの波及

直近ではイスラエルとハマスの戦争が中東で続き、その緊張はタイとカンボジアの国境紛争へと波及している。局地的な衝突が、想定外の形で拡大する構図は、過去の大戦前夜とも共通する。

台湾海峡と段階的エスカレーション

一方で、来年以降の焦点として台湾海峡が挙げられる。中国が全面戦争ではなく、海峡周辺の島嶼部に限定した地域紛争を仕掛ける可能性は、専門家の間でも指摘されている。これは国際社会の反応を試す、いわば“段階的エスカレーション”の一形態である。

ロシアとバルト三国をめぐる緊張

さらにその先、ロシアとバルト三国をめぐる緊張も無視できない。ただし、核保有国同士の直接衝突は抑制されるとの見方が強く、実際には代理戦争や周辺国を巻き込む形での衝突が想定されている。

2030年危機説とヨーロッパの危機感

こうした中、ヨーロッパでは危機感が急速に高まっている。2025年7月、フランス軍の統合参謀総長マンドン将軍は「3〜4年以内にロシアとの衝突に備える必要がある」と警鐘を鳴らし、「子どもを失う覚悟がなければ、我々は危機に直面する」と強い表現で国民に備えを促した。

フランスの国家戦略レビューによれば、ロシアはウクライナ侵攻以降、軍需産業を戦時体制へ移行させ、2030年までに大規模な戦力増強を目標としている。複数のリスク要因が2030年前後に重なり合う――いわゆる「2030年危機説」は、こうした現実的な軍事動向に基づくものである。

歴史の教訓と日本への問い

歴史が示すのは、戦争は突然始まるのではなく、危機が長期間にわたり積み重なった末に顕在化するという事実である。現在は、その「積み重なり」の局面にあるのかもしれない。

核保有国でさえ「子どもを失う覚悟がなければ、我々は危機に直面する」と言っているのに比べ、アメリカに核の傘を借りて日々を過ごしている日本に、いかほどの備えがあるのだろうか?

 

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