(一社)氣と丹田の合氣道会 楽心館

熟年世代に合気道が効く理由とは?人間関係にも効く“技”の真髄

熟年世代が合気道を身につけるメリットって、何?

無論、健康や身体感覚の回復などいろいろあるでしょうが、私が思う最大の利点は…「言葉を介した人間関係」への応用だと、初心者ながら私なりに確信しています。

だから、面白いんです。

言葉って…なんで?

ちょっと寄り道して具体例をあげましょう。

今テレビドラマで放送中の「南極大陸」ですが、後に伝説となった実話があります。衛星通信もインターネットもない時代、決死の覚悟で極地にいる南極越冬隊は日本との連絡が大変でした。

隊員と日本にいる家族は、電報でやりとりしていました。その頃の紅白歌合戦でよく「アカグミガンバレ ナンキョクエットウタイ ヨリ」なんて読み上げられたのを覚えてる方もいるでしょう。

でも、電報は字数に制約があり、「一筆啓上火の用心おせん泣かすな馬肥やせ」ではありませんが、家族も隊員も短い字数で気持ちを交信するのに腐心していました。

しかも、通信員を介する伝達だから、互いに人目を気にして行儀の良い文面を考えてしまう。たいがい、「家族は皆元気です。お互いお体に気をつけて下さい」のようになる。

心を動かした、たった三文字の電報

そんな中、隊員の一人の妻が、その電報を送ったのです。電文は、隊員である夫をはじめ皆の前で読み上げられました。ところが、通信員はその電文に絶句しました。

たったの三文字だったからです。「アナタ」。

瞬間、隊員全員があっけにとられ…続いて、それぞれが自分の家族の心情を思い、その場がシーンとなったといいます。

「アナタ」…なんて、普通、周囲の人を意識した状況で使う言葉じゃありませんよね。

あたかも、子供も寝静まり、二人だけのしっとりした時間の中で妻が夫にかける言葉でしょう。当の夫のみならず、他の隊員の心がどのように動かされたのか、想像つきますよね。

合気道と「言葉」の共通点

僕は、この話は合気道の術理とまったく同じだと思います。接点は、カタカナの言葉だけ。

1万キロの彼方にいる男たちの心を、三文字で制してしまったのですから、さしづめ、その妻は合気道の達人のようです。

これが、ビデオかなにかでえんえん涙を流しても、心を動かすことはなかったにちがいありません。

石川先生の教えと、電報の妙

楽心館の石川先生から、毎度口酸っぱく基本を教えられます。

「気剣体一致、一挙動、等速直線運動、接点、軸を立てる…力を入れない!」

妻はカタカナの三文字を接点にして合気をかけ、聞いた男たちの気恥ずかしさや先入観といった相手の軸を一挙動で突き崩し、心をキメてしまったのです。

体の軸はいわば、「夫への愛情」だったのでしょう。

言葉は、身体の延長である

言葉もまた身体の延長です。「心を動かす」「動かされる」…気剣体の術理が言葉でもいえるのですね。

家庭で職場で、何気なく言葉を交わしていますが、言葉は一瞬で多数の人を動かす力もあり、逆に人を傷つけることもあり。

私自身、ものを書く仕事が長かったせいもあるかもしれませんが、表現のプロでなくとも、肝心なことを伝えるには、相手と“つながる”技の熟練、心構えが大事なんだと、合気道から教えられています。

日常会話もまた「合気」

だから、妻や友人と会話するときは、目を見て(つながって)柔らかく(力を抜いて)…話すよう自分に言い聞かせています。

会話にも、入り身や転換があるんですネ。
(なんにせよ、カッと怒るのが一番逆効果ですね)

合気道は、熟年世代にこそ必要な「技」

熟年の皆さんはお気づきでしょう。

「そうか。合気道そのものでブイブイ強くならなくともいいんだ。合気道はコミュニケーションの武道なんだ」ということが。

私自身、入門2年近くなっても、基本の繰り返しです。様々な技の型を通して、基本の術理を口酸っぱく先生から指摘されます。

でも、うまく合気がかかるときの感覚は不思議な感じです。

同様に、妻や友人と会話して…(お、うまく合気がかかったぞ!)と、相手をひきつけた感覚…の面白さを楽しんでいるこの頃です。

まとめ:言葉の合気を、人生に

中高年のみなさん、こんなことを稽古後にビールでも飲みながら話したら愉快だと思いませんか。

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