武道のスピードって、何だろう??(その1)
情けないことに、通風とやらを初体験、身動きもままならいからか・・ふと、「武道のスピード」のことを考えてみた。
剣の稽古で、石川先生の上段からの剣を受ける。
軽く、振り下ろしている感じだが、なぜか、かわせない。先輩たちを見ても・・至難らしい。
横から見ていて、猛スピードかというと・・そうでもない。上段からさりげなくスッと振り下ろされる剣は一見かわせそうなのだが・・かわせない。????初心者は誰もが乗り越えなければならない壁なんだろうね。
「武道のスピードは、絶対スピードにあらず」と先生は仰る。そのかわり、打つに際しては「一、 二の・・イで」「初動を消す」「等速直線運動」さらにいえば、「呼吸で打つ」と仰る。
これを口酸っぱく繰り返されるが、頭で理解できても、体がなかなか反応しない。
打つ時はつい、スピード、すなわち(ギュン!)と加速させてしまう。
ふと、プロ野球のあるピッチャーのことが浮かんだ。ソフトバンクの和田毅投手。和田は、決して剛速球投手ではない。投球フォームもしごくゆっくりだ。球の速さは130キロ台、これくらいの球のスピードなら高校野球の投手でもざらにいる。ところが、プロの強打者がなかなか打てない。
打者は一応に、こう首をひねる。「球の出所が見えないんだよ・・」「手元で球が伸びる」
打席から投球フォームを見ると、通常は、バックモーションの初期に球を持った手首のスナップが見えるものだ。投手のテイクバックから肩・肘・手首の連動をから「起こり」を察して、タイミングを合わせているのだ。
少なくとも、腕を肩から上へ振り上げた段階で、ボールも視野に入る。
打者はそこから逆算して投げ込まれる球にバットをあわせていく。
ところが、和田投手のしなやかなフォームは、バックポジションでも・・モーションを進めても、肘の位置も手首も・・まだ見えてこない。身体の開きが少ないのも特徴だ。打者から見て、腕が体の陰にあってほぼ一直線になっている。
「初動が見えない」のだ。
打者が和田の球の動きを認識する時は、すでにリリースポイント、腕が体の前へ振り下ろされた瞬間からだ。そこでいきなり、球が見える。
直球のスピードが130キロ台しかなくとも、打者は確実に反応が遅れてしまう。
打者から球の「起こり」が見えやすければ、160キロの速球でも、対応は十分できる。実際、160キロの速球を投げていた外人投手が、打ち崩されるケースがいくらもあった。
和田は速球投手ではないが、速球投手以上に合わせるのが難しい。物理的なスピードに頼っているのじゃなく、(相手の知覚の隙間)へ投じられる球なんだよね。「初動を消している」といえるかもしれない。
・・・なんて、初心者の私が考えることだから、余り真に受けないでね。
さて、剣に戻ると、当然、「起こり」をどの段階で捉えるか・・が受ける側の反応と直結する。
しかし、和田投手のスナップのように剣が隠れる空間はない。先生の剣はじめから完全に視野に入っている。テイクバックもない。
なのに、反応が遅れてしまう。
肩の動き、肘、手首の動き、下半身の動き、そして、目の動き・・いろいろやってみたけれど、なかなか、捉えきれない。(ステルス)なのだ。レーダーに捉えられない。う~む。
武道のスピード、初動が消えてるとすれば、どこで「起こり」を捉えるか・・が課題らしい。
絶対スピードでない、(相手の知覚の隙間)へ振り下ろす剣・・か。
推理するだけでも、面白い。
身動きもままならないし・・次回もこの続き。