謙遜して道場問い合わせしようとしている人たちへ──稽古はもう始まっています

謙遜して道場問い合わせしようとしている人たちへ──稽古はもう始まっています

60歳以上の初心者の方も、発達特性が気になる子どもの親御さんも、よく「すみません」と謙遜しながら問い合わせてきます。
でも私は、その謙遜にこそ「稽古の入口」があると感じています。
合氣道「楽心館」で起きた一場面から、「できる/できない」以上に大切な稽古の視点を言語化します。

不思議に感じたこと

その日も、問い合わせの電話は少し控えめな声から始まった。
「60歳を過ぎているんですが……」「運動も得意ではなくて……」
言葉の端々に、遠慮や謙遜がにじんでいる。

最近、こうした問い合わせが続いている。
年齢のこと、体力のこと、過去の怪我のこと。
あるいは、「落ち着きがなくて」「発達障害があるかもしれなくて」と、
子どものことを気にしながら、申し訳なさそうに話す親御さん。

そのたびに、私は少しだけ不思議な感覚になる。

稽古が始まる前に、もう稽古が始まっている

実際に稽古場に来ると、その印象ははっきりする。
道場に入るときの足取り、畳に立った瞬間の姿勢、
「うまくできないと思います」と言いながらも、
きちんとこちらの話を聞こうとする目。

子どもも同じだ。
前方回転受け身の前で止まってしまう子がいる。
怖くて動けない。涙が出る。身体が固まる。

でも、逃げない。
畳の上に座ったまま、こちらを見る。
やらないのではなく、「どうしていいかわからない」状態で、そこに居続けている。

私は、その様子を見ながら思う。
もう稽古は始まっているな、と。

抗う身体は、間違っていない

楽心館の稽古では、抗う身体がよく現れる。
言うことを聞かない。思ったように動かない。
力が抜けない。怖さが先に立つ。

子どもでも、大人でも、60歳以上の方でも同じだ。

それを「できていない」と切り分けるのは簡単だ。
でも、私はそうは見ていない。
抗う身体は、未熟なのではなく、正直な反応だ。

剣術の理合い・身体感覚・中心軸

剣術の理合いでも、身体感覚でも、
中心軸が定まる前には、必ず迷いが出る。
その迷いが、身体として表に出ているだけだ。

泣くことも、止まることも、謙遜することも、
すべて「稽古の入口」に立った証拠だと私は思っている。

「向いているか」ではなく、「向き合っているか」

親御さんからよく聞かれる。
「うちの子、向いていますか?」
高齢の方からも聞かれる。
「この年齢からでも大丈夫でしょうか?」

正直に言えば、私はあまりその問いを重要だと思っていない。
楽心館は、できる・できないを選別する場所ではない。
年齢や特性で振り分ける場でもない。

向き合おうとしているかどうか。
ただ、それだけだ。

落ち着きがない子が、畳の上に戻ってくる。
何度失敗しても、やめずにそこにいる。
それは「非認知能力」という言葉以前の、
もっと根源的な「学び」だ。

親子で稽古をするということ

親子で通える習い事として、合氣道を選ぶ理由は人それぞれだ。
礼儀を学ばせたい、体を強くしたい、集中力をつけたい。

でも、実際に稽古を続けていくと、
多くの親御さんが別のことに気づき始める。

  • 子どもができないとき、自分はどう見ているか
  • 急がせていないか
  • 結果を先に求めていないか

叱らない教育、失敗できる場、続けること。
それらは理念として教えるものではなく、
畳の上で、親自身が体験するものなのだと思う。

締め|問いとして残す

謙遜して問い合わせをしてくる人たちを見るたびに、
私は同じことを思う。

そんなに身構えなくていい。
そんなに自分を下げなくていい。

武道をやりたい。
必要だと感じた。
その感覚がある時点で、もう十分だ。

できないところから始まるのが、合氣道だ。
泣きながらでも、止まりながらでも、
畳の上に立ち続けること自体が稽古なのだと思う。

あなたは今、できないことに出会ったとき、
どんな距離でそれと向き合っていますか。
その問いこそが、稽古の続きなのかもしれません。

FAQ|よくある質問(問い合わせ前の参考)

60歳以上でも合氣道は始められますか?

はい。楽心館では年齢よりも「向き合う姿勢」を大切にしています。
体力や経験に合わせて、無理のない形で稽古を進めます。

落ち着きのない子ども・発達特性が気になる子でも参加できますか?

参加できます。大事なのは「できる/できない」より、
稽古の場に居続け、少しずつ身体と感情に向き合えるかどうかです。
気になる点があれば、事前に状況を共有してください。

親子で一緒に通えますか?

はい。親子で通える習い事として、同じ畳の上で学ぶことができます。
子どもだけでなく、親も「見守り方」や「関わり方」を体験を通して学べます。

※本記事は稽古現場での観察と筆者の経験に基づく一般的な内容です。個別の診断や治療方針を示すものではありません。発達特性や不安、生活上の困難が強い場合は、医療機関や公的支援機関への相談をご検討ください。

 

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