四十年越しの再会 ― 直心影流剣術とのご縁に導かれて

四十年越しの再会 ― 直心影流剣術とのご縁に導かれて

 

私が初めて直心影流剣術に触れたのは、昭和五十七年(1982年)のことです。初めて手にした木刀の柄には、いまもその年号が刻まれています。

当時、指導してくださったのは小川忠太郎先生のお弟子で、大学の先輩でもあった長野善光先生でした。

稽古といっても、法定の形を修練するような本格的なものではなく、ただ剣の上げ下げを共にさせていただく程度のものでした。

それでも、「地球を剣先で突き刺して、それを持ち上げる気概で」と語られた言葉が、心に深く残っています。

しかし当時の私は、その言葉の意味を受け止める準備ができていませんでした。

やがて稽古の集いも自然と途絶え、学びの機会を自らの未熟さで手放してしまいました。

海軍兵学校ご出身の長野先生に対して、失礼の多かったことを今も悔いています。

生き方や歴史観を学ぶ貴重な機会を逃したことが、心に長く残りました。

それでも――心のどこかで、いつか直心影流を学び直したいという思いは消えることがありませんでした。

やがて先生は病に倒れられ、私はちょうど楽心館を立ち上げたばかりの頃でした。

指導員もおらず、一人で一日に二、三か所を巡回しながら道場を守る毎日。ご葬儀に伺うことも叶わず、胸の奥に小さな棘のような思いが残りました。

「機が熟す」とは、まさにこのことだったのかもしれません。

四十年の時を経て、ようやく心身も環境も整い、剣を学び直す時が訪れました。

ご縁をいただき、東京武道館で行われている研修会に参加するようになり、

そこで皇宮警察ご出身の加藤浩二先生、警視庁ご出身の石井猛先生、

そして補佐の谷口茂樹先生・石井豊先生にご指導をいただいています。

「正師を得ざれば、学ばざるにしかず。」

――正しい師に出会えないのであれば、むしろ学ばない方がよい。

この言葉の重みを、今ようやく実感しています。

四十年の歳月を待ったからこそ、今の学びがどれほど尊いものかを深く感じています。

これまで支えてくださったすべての方々に感謝し、

学ぶ機会を与えてくださる先生方に心からの敬意を捧げます。

武の道は、出会いとご縁の積み重ねによって続いていくものだと、今改めて思います。

【お知らせ】

このたび、第21回東京都形剣道大会において、

直心影流剣術の模範演武を務めさせていただくことになりました。

打太刀:谷口茂樹 先生

仕太刀:石川智広

大きなご役目を仰せつかり、身の引き締まる思いです。

四十年前に心の奥に残した「未完成の一歩」を、いまようやく踏み出せることに感謝し、

一太刀一太刀に、これまでのご縁と恩を込めて臨みたいと思います。

【大会概要】

主催
一般財団法人 東京都剣道連盟
日時
会場
新宿スポーツセンター 大体育室

〒169-0072 東京都新宿区大久保3-5-1(JR高田馬場駅より徒歩10分)
種目・種別
日本剣道形試合

  • 三段以下の部
  • 四・五段の部
  • 六・七段の部

【あとがき】

武道の学びは、年齢や段位ではなく、「時の熟成」によって開かれるのだと思います。

長い年月を経て再び師に出会い、学びを新たにできることは、何よりの幸せです。

直心影流の心を通して、これからも「武を通じて人を育てる」という本懐を歩み続けたいと思います。


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