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効率を優先して失ったもの――合氣道と日常が教えてくれた「今ここに心を置く力」
犬と子どもに教えられた「夢中になる姿」
この一か月を振り返ると、大きな変化はないように思いながらも、同棲が始まり、老犬15歳が一緒に暮らすようになりました。犬と長く過ごすのは初めてで、毎日が新鮮です。普段は20時間も眠っているように見えるのに、食事のときだけは全身で感情をむき出しにして食いつく。その姿には、毎回見入ってしまいます。
同じ頃、道場で3歳の子どもが走り回り、「はやいはやい!」と自分で言って笑っている姿を見ました。犬も子どもも、「今この瞬間」に心も体も全力で向かっています。その光景を見て、私はふと考えました。――自分は効率を優先するあまり、大切な何かを忘れてしまっているのではないか。
効率を優先すると、なぜ技が止まるのか
犬や子どもは「効率」や「結果」とは無縁です。ただ食事に夢中になり、ただ走ることに夢中になる。一方の私はどうでしょうか。 「早く片づけよう」「効率よく進めよう」と考えるばかりで、対象そのものに関心を置くことを忘れがちになっています。
合氣道の稽古でも同じことが起こります。「もっと早く技を決めたい」と思うと、体が固まり、相手も動かなくなる。効率や結果を意識した瞬間に、むしろ技が止まってしまうのです。
合氣道の稽古で取り戻す「今ここに心を置く力」
犬や子どもを見て気づかされたのは、「効率と引き換えに失っていたもの」が “今ここに心を置く力” だということです。
それは合氣道の技でも同じです。
- 相手の手の重さ
- 自分の呼吸の位置
- 足裏が床をとらえている感覚
こうした“いま目の前にある事実”に心を置いたとき、技は自然と噛み合って成立します。逆に「どう決めようか」と効率を優先すればするほど、体も心も硬直してしまう。
稽古と日常に活かす3つの意識
1. 対象に心を置く(効率より観察)
技なら相手の軸、会話なら相手の表情。まずは“対象そのもの”に集中する。
2. 過程を楽しむ(結果より途中)
「崩す」ことよりも「相手の重みを受け止めている」過程を味わう。結果は自然についてくる。
3. 内側に戻る(評価より身体感覚)
呼吸、足裏、肩の力み。自分の体の内側に意識を戻せば、外の状況にも自然に対応できる。
これは武道の稽古に限らず、仕事や子育て、親子で習い事に取り組む場面でも役立ちます。効率や結果を求める前に「今ここ」に意識を置くことで、関わりが深まり、学びの質が変わります。
おわりに/読者への問い
この一か月、老犬と子どもから学んだのは「効率ではなく、今ここに心を置くこと」でした。合氣道・楽心館の稽古でも、日常生活でも、この姿勢を取り戻すことが自分の課題だと思います。
あなたは最近、効率を優先するあまり、大切なものを見落としていませんか? その問いを持つだけで、今日の稽古や日常が、少し違って見えてくるはずです。