(一社)氣と丹田の合氣道会 楽心館

積極財政派の主張と現実の乖離|長期金利上昇下で検証する日本経済政策

 


 

積極財政派の人々への疑問

日本の長期金利は上昇基調が続いています。それにもかかわらず、いまだに積極財政派の人々は発言を続けています。彼らは「金利上昇を許容しつつも、経済成長率・税収増・生産性向上を伴う政策を進めればよい」と主張しますが、この前提には大きな疑問があります。

1. アベノミクス10年間の検証(2013~2022年)

過去10年を振り返ると、「経済成長率・税収増・生産性向上」のいずれも十分な成果は確認できません。

成長率

  • 実質GDP成長率は平均1%未満で、バブル崩壊後の「失われた20年」と大差なし。
  • 円安・株高は一時的に進んだが、潜在成長率は横ばい。

税収増

  • 名目GDP増加や株高で一時的に増えたが、少子高齢化・低賃金など構造的課題は未解決。
  • 増収の多くは消費税率引き上げによるもので、経済成長による自然増収は限定的。

生産性向上

  • 労働生産性はOECD中位~下位で伸び悩み。IT投資や規制改革は遅れ、労働市場の硬直性も改善されなかった。

2. 成果が出なかった主な理由

  1. 構造改革の不十分さ
    金融緩和や財政支出は行われたが、規制緩和や労働市場改革は部分的にとどまり、政治的抵抗で骨抜きになった。
  2. 少子高齢化の急速な進行
    生産年齢人口の減少が国内需要と供給力を制約し、成長の頭打ち要因となった。
  3. 金融緩和の副作用
    長期のゼロ金利・マイナス金利政策により、金融機関の収益力低下や資本配分の歪みが生じた。
  4. 公共投資の選別不足
    教育・研究開発・インフラ更新など将来の成長力を高める分野よりも、短期的景気刺激型の支出が優先された。

3. 積極財政派の主張と現実の乖離

積極財政派(特にリフレ派寄り)は以下の立場をとり続けています。

  1. 需要不足が停滞の原因
    → 大規模財政支出と金融緩和で需要を刺激すれば成長率は上がる。
  2. 国債は国内通貨建てで破綻リスクはない
    → 国債増発や金利上昇も問題にならない。
  3. 経済成長が先、財政再建は後
    → 成長による税収増で財政は自然に改善する。

しかし現実には、住宅ローン金利の上昇、民間投資資金の相対的減少、金利変動による金融機関の債券評価損、年金運用への影響など、経済全体に不安要因が拡大しています。

4. 今後の懸念

  • 財政支出が常態化し、債務残高が雪だるま式に増加する可能性。
  • 出口戦略を制度的に担保しない限り、「成長すれば自然に解決」という前提は成立しにくい。

結果として、過去の日本では借金だけが増え、潜在成長率はほとんど上がらない状況が続きました。同じ枠組みを繰り返しても、異なる成果が出る保証はありません。

5. まず取り組むべきこと

優先すべきは、若年層の所得拡大です。具体的には、正規・非正規間の所得格差や男女賃金格差の是正、低賃金外国人労働者の流入規制など、労働市場の健全化が不可欠です。これこそが、出生率向上・持続的な需要拡大と生産性向上の土台となります。

 

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