(一社)氣と丹田の合氣道会 楽心館

戦略的思考をトランプ大統領から学ぶ|国際政治と道場運営の共通点

 


 

戦略的思考をトランプ大統領から考える

私も道場長として、小さいながら組織の長を務めさせていただいた経験があります。各道場の指導員を束ね、全体を運営する立場に立つと、全体を見渡した長期的判断が求められます。

しかし現実には、指導員はそれぞれ自分の教室や門下生への対応に追われ、組織全体を最適化する「戦略的思考」を持つ人は少数です。もちろん、目の前のことに最善を尽くすのは大切です。しかし、その判断基準が個人的な好き嫌いや短期的な損得に偏ってしまうと、組織全体の長期的利益とぶつかることがあります。

私自身、そうした価値観のズレから感情的対立が生じ、関係が決裂してしまう経験もありました。

戦略的思考の本質

戦略的思考とは、限られた資源で長期的ゴールを達成するための筋道を描くことです。それは目の前の勝ち負けや損得ではなく、「全体の未来」を優先する視点です。

この観点から、今回はトランプ大統領の一連の政策を考えてみます。私自身は彼を信奉しているわけではありませんが、国際政治の文脈で見ると、彼の決断には一貫した戦略的意図が読み取れると感じます。

世界に影響する三つの要素

  1. 人口知能革命
    AI技術を制した国が経済・軍事で優位に立つ時代。産業革命以上のスピードで、産業構造・価値観・政治体制を塗り替える変化が進んでいます。
  2. 中国の軍事的圧力
    空母・ミサイル戦力を強化する中国に対抗し、米国・インド・オーストラリア・日本が防衛予算を拡大。NATO諸国もインド太平洋戦略に関与し、米中冷戦の構図が鮮明化しています。
  3. 中国の工業力
    「低価格の大量供給」→「技術標準の掌握」→「経済依存を通じた政治的影響」という三段階で世界を動かす力を持っています。中国の工業力は世界需要の約5割を賄う水準で、米国や日本は依存脱却を模索中です。

トランプ大統領の三つの戦略的決断

1. イラン攻撃

中国は「一帯一路」構想でイランを東西の要衝として重視しています。

  • チャーバハール港・バンダルアッバス港など、インド洋への玄関口
  • 石油・天然ガスという戦略資源

これらを確保すれば、中国はインド洋〜地中海ルートの支配力を高めます。トランプ大統領によるイラン攻撃は、「中東の覇権は米国が握る」という明確なメッセージであり、中国・ロシアの影響拡大を牽制するものでした。

2. 関税戦争

WTO加盟と米国の期待
2001年、中国のWTO加盟は「国際ルールの中で中国が市場開放を進めれば、やがて公正な競争相手になる」という期待のもとで行われました。しかし、中国は国家主導の補助金政策や知的財産権侵害を続け、WTOの罰則の弱さを利用しました。

コロナ禍での加速
2020年前半、世界がロックダウンで生産停止する中、中国は早期に工場を再稼働。マスク・医療機器・電子部品などで世界シェアを拡大し、「必須物資供給国」としての地位を固めました。

トランプ関税の狙い

  • 関税で中国製品の競争力を低下させ、米国内製造を保護
  • 不公正貿易慣行への圧力
  • 管理貿易で交渉カードを確保

短期的には輸入減少や一部の製造業回帰が見られましたが、中国は迂回輸出や輸出先多角化で対応。長期的課題は残りますが、「経済安全保障」の意識を米国内に広めた効果は大きいといえます。

3. ロシア-ウクライナ戦争停戦協議

バイデン政権は中国・イラン・ロシアの三正面に対応する「負担過多」戦略を取っていました。一方トランプ大統領は、ウクライナ停戦と中東安定化で二つの戦線を終わらせ、中国への真正面作戦に集中しようとしています。

特に、空母群や長距離ミサイルの抑止力を南シナ海・台湾周辺に集中できることは、対中戦略上の大きな利点です。また、8月15日(ポツダム宣言受諾日)という歴史的日に停戦協議を合わせることで、「歴史的転換点」として演出しやすく、国内外で政治的資本を得やすくなります。

戦略的思考に学ぶ

これら三つの決断を、「好き嫌い」「損得」「善悪」の基準だけで評価するのは危ういと感じます。むしろ、これらは第三次世界大戦を避けつつ、中国封じ込めに集中するための戦略的判断として理解すべきでしょう。

道場運営でも国際政治でも同じですが、短期的な感情や局所的利益ではなく、長期的・全体的な最適化を目指す思考こそが組織や国を前進させます。私たち一人ひとりも、この「戦略的視点」を持って日々の判断をしていきたいものです。

 

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