物価上昇に困る国民。日本に必要な政策手段
物価と心の関係──円安・インフレと、私たちの生活と思考の柔らかさ
最近、道場でよくこんな話を耳にします。
「食材が高すぎて、家計がギリギリだ」
「電気代にガス代、もう笑えない」
中には「スーパーのセルフレジでお米をスキャンし忘れた人がいた」なんて話も。
報道によると、意図的に高額商品をスキャンせず持ち帰るケースが増えているとのこと。あるスーパーでは年間被害額が500万円超とも言われます。
法的には「占有離脱物横領罪」に問われる可能性があり、1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金。
つまり「ちょっとだけ…」のつもりでも、立派な犯罪です。
でも、私はこうも思います。それだけ、心が疲れているのではないか。
物価高は、単にお金の問題ではありません。日常の選択肢を減らし、心の余裕を奪い、道徳や思考の柔らかさすら削っていく。
そんな社会に、私たちは今、足を踏み入れているのかもしれません。
円安・物価高に押しつぶされそうな暮らし
2025年現在、1ドル=160円台の円安が続いています。その影響で、エネルギー・食料・日用品…すべてが高くなりました。
特に厳しいのが「実質賃金が下がり続けている」こと。
名目上は昇給しているように見えても、物価の伸びに追いついていないため、生活は苦しくなる一方です。この状況は、すでに27か月連続のマイナス(2025年6月時点)。
日銀の金融政策──“上げたくても上げられない”事情
こうなると当然、「日銀は金利を上げて円高にしたらいいんじゃないか」と思いますよね。
しかし、それが簡単にできない理由があります。日銀は、過去に超低金利の国債(長期債)を大量に買い込んでいます。
もし今、金利を引き上げれば、保有する国債の価値が下がってしまい、帳簿上は大赤字=債務超過。そうなると金融機関や政府の信用にも関わるため、日銀は身動きが取りにくい。
ただし誤解してはいけないのは、日銀は企業ではないということ。
仮に債務超過になっても倒産するわけではなく、制度的な補填も可能です。
とはいえ、日銀が「円安対策として大幅利上げ」をすれば、日本国債の利払い費も膨らみ、財政の健全性が崩れてしまいます。だからといって放置もできない。まさに八方ふさがりです。
金利を上げれば円高になる?──条件付きで「Yes」
理論的には、金利を上げれば円が買われて円高になります。
ですが現実には、アメリカの金利(5.25〜5.5%)と日本の金利(0.1%)の差があまりにも大きいため、日本が少し金利を上げたくらいでは焼け石に水、というのが市場の見方です。
対症療法ではなく、「三位一体」の政策が必要
たとえば:
- 円安を抑えようとして利上げすれば、国債の利払い負担が爆増。
- 物価高に困って給付金を出し続ければ、財政赤字がさらに悪化。
つまり、目先の苦しさにだけ対応していては、「副作用」のほうが大きくなってしまいます。必要なのは、金融政策・財政政策・構造改革の三位一体のアプローチです。
では、どんな政策が必要なのか?
【1】財政政策(国が直接お金を動かす)
- 消費税の一時的な引き下げ
⇒ 実質的な“値下げ効果”で家計を支援。 - 給付金や光熱費補助
⇒ 子育て世帯・低所得世帯への即効性あり。 - 賃上げ企業への減税優遇
⇒ 企業の内部留保を動かし、給与増を後押し。
【2】構造改革(経済の仕組みそのものを変える)
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