子どもが自信を持てる瞬間とは?
「やればできる」よりも、「できたからやれる」。
これは、ある合氣道の稽古で実際にあった子どもの変化から生まれた言葉です。
今回は、子どものやる気の正体と、それを引き出すための日々の工夫について紹介します。
稽古場での出来事|再び道場に戻ってきた親子
この春、かつて通っていた親子が道場に戻ってきました。
以前は、ぬいぐるみを前に置き、落ち着かない様子だったあの子です。
しかしこの日は違いました。
開始から終了まで、驚くほど集中している。
思わずお父さんに声をかけてみると、意外な工夫があったのです。
小さな習慣が子どもを変えた
その子はこれまで、稽古中に飽きてしまったり、ぐずって途中で抜け出すこともありました。
「がんばったらポケモンを買ってあげるよ」と励ましても、続きません。
しかし最近は、受け身を取り、型の手順も覚え、稽古をやり切るようになっていたのです。
お父さんがこう言いました。
「今までは週1回30分くらい家で練習してましたが、最近は“1日1分だけ”毎日やるようにしたんです。それだけなんですが、本人の様子がどんどん変わってきて…」
自信は“時間”より“設計”で生まれる
私はこの話を聞いて、はっとしました。
**「やればできる」ではなく「できたからやれる」**という順序が大切だったのです。
武道は「できない自分」を人前にさらす場面が多い。
技が分からない、受けができない、順番を忘れる…。
それを「恥ずかしい」と感じて心を閉ざしてしまう子も少なくありません。
でも、1分でも「できた」と思える経験があると、自分の中に“立つ場所”が生まれるのです。
それが、子どもが「ちゃんと稽古したい」と思い始めるきっかけになるのです。
子どもを動かす声かけとは?
私たちはつい、「頑張ればできるよ」と声をかけがちです。
けれど、それは裏返せば「今はできていない」という前提にも聞こえる。
それよりも、
- 「昨日より少しできたね」
- 「今日は最後までやれたね」
- 「手を出せたことがすごいよ」
というように、“すでにできたこと”に焦点を当てると、子どもは安心して前に進めます。
習い事も育児も「小さな成功体験の設計」から
この話は、合氣道の稽古に限らず、あらゆる子育ての場面で活かせます。
- 「週1のがんばり」より「毎日の1分」
- 「長くやらせる」より「できることで終わらせる」
- 「やらせる」より「自分からやりたくなる導線作り」
子どもが“やりたい”と思う瞬間をつくるためには、**「自信の設計」**から始めることが近道なのです。
合氣道と「自発性」の共通点
合氣道では、相手を力で動かすのではなく、相手が自然と動きたくなるように導くことを大切にしています。
この考え方は、子どもの指導にもそのまま通じます。
大人が「やらせよう」とするのではなく、子どもが「やりたい」と思う方向へ気持ちを整える。
それが、合氣道であり、教育でもあるのです。
“できた”を積み重ねる工夫を
稽古とは「できなかった昨日を責める時間」ではなく、
「ちょっとだけできた今日を育てる時間」なのだと、私は思います。
あなたは、最近“自信を失っている子”にどんな声をかけていますか?
「やればできるよ」ではなく、「今できたね」を一緒に見つける。
そんな視点を持つことから、子どもたちはまた一歩踏み出していくのかもしれません。