歳時記
これから反抗期
  息子が赤ちゃんだった頃、眠りの浅い子だった。夜泣きをすると、私の胸の上にうつ伏せに乗せて、寝付かせた。「親亀の上に小亀を乗せて」、あの頃の親子関係は、この歌にある亀のようでもあった。ついこないだのことのように、思い出される。
  昨夜遅く、息子が私の寝室に入ってきた。眠れないらしい。「一緒に寝ようよ」と、私。最初は二人で布団の上に並んだが、徐々に私が畳の上に押し出された。それでも私の上に、息子が無意識に手や足を伸ばしてくる。彼の左足が、私の右足の上に乗っかったまま朝を迎えた。どこかに接点がないと、落ち着かないのだろう。
  これはあれだな、ワンちゃんがご主人様に「お手!」と足を乗せて安心している。これと同じだ。今の親子関係は、このパートナー関係に例えられるかもしれない。
  来年は中学生になる。身体も少年から青年へ。彼自身に選ばせる場面が、多くなってゆく。亀・犬・?次は何だろう。昔見た映画に「キタキツネ物語」がある。親キツネが巣離れをさせるために、子ギツネを追い回す場面があった。子ギツネたちは、何度も巣に帰ろうとするが、親キツネの真剣さに根負けして去って行った。しかし一匹、巣に帰った子ギツネがあった。しかしこの子は、後に巣の中で飢え死にしてしまったのだ。
  愛は春風のようだ。そして時に北風でもある。その変化が非情なほどでなければ、ならない時もあろう。そして時機を失することがあってもならない。