鉢かえて ガザニアの花 凛と咲く


 ふと見ればガザニアに、元気がありませんでした。根詰まりしているのだろうと思って、大きめの鉢に植え替えました。揚げる前のインスタントラーメンの麺の塊のように、根が詰まっていました。根を痛めないように解(ほぐ)して、柔らかい土で包みます。これで呼吸ができるはずです。やがて花が、凛と咲きました。駄句はその時のものです。

 教育とは育てることにおいて、動植物の世話と共通する部分もあります。与えているばかりではなく、時には休んで「痛めないように解して」も大切です。


 20年もこの仕事をしていて一番うれしいこと、かつての教え子がふらりと、訪ねてくれることです。道場の入り口でこちらを見ている人、時には立派な青年・お嬢さん。いったい誰だろう?瞳をみて、「あっ!君だったのか!」、あまりもの成長振りに驚かされる。涙をぽろぽろこぼしていたような子が、実に礼儀正しい話し方をするのに、思わず過ぎた時を忘れるものです。


 もちろんいいことばかりではありません。方向性が合わずに別の道を歩んだ方々、私が諭し心の足らなさで別れた方々。

 つい先週、中部地方から15年前に縁のあった方が訪ねて来ました。話を聞くと、「勤続疲労で鬱病になり休職中、7月から復職をする。ついてはその前に、私の顔を見て元気をもらいたかった」そのような趣旨でした。

 「鬱かい。俺もよくなるよ。脳が限界で、機能不全を起こした状態さ。君も限界までやったのだから、たいしたものだ。限界で、見えてくるものがある。それは健康・家族の大切さ。大事にしろよ」と言って、千葉駅まで見送りました。お土産にご当地の「ういろう」を、渡してくれました。わざわざ重いものを、抱えてきたのだな。手に受け取った感触に、彼の心の奥のお重さが伝わってきました。


 私は彼の心の根、「痛めないように解して」が、できただろうか?ならば今頃、笑顔の花、凛と咲いているはずなのだが。解け・ほどけ・ほとけ・仏。