(一社)氣と丹田の合氣道会 楽心館

稽古と護身術の関係|守・破・離と真・行・草で深まる合氣の学び

稽古と護身術の関係|守・破・離と真・行・草で深まる稽古の道

楽心館の稽古では、単なる技の習得に留まらず、身体と心が一致したときに現れる合氣の感覚を育てていくことを重視します。そのための稽古体系は、段階的に深まる三段構え──すなわち守・破・離。そしてそれは、筆の運びのごとく変化していく真・行・草という三段階にも重ねられます。

【守】──型をなぞり、理を学ぶ

まず最初は「守」。この段階では、技の形や手順を丁寧に学び、型の中に込められた理(ことわり)を身体で覚えていきます。力の方向、崩しの位置、接触点の取り方など、動きの一つひとつに意味があることを理解し、それを忠実に再現することが目的となります。まさに「真」の如く、整った正統な型の世界です。

実例として、ある小学生の少女が通学途中に後ろから両手を掴まれるという危険な状況に遭遇しました。この子は道場で繰り返し稽古してきた「後ろ両手取り小手返し」の技を、そのまま手順通りに使いました。これはまさに「守」の段階が実際の場で再現された瞬間です。

【破】──緩急・間合い・流れを学ぶ

やがて、形を覚えるだけでは不十分であることに気づきます。この段階が「破」です。ここでは、呼吸・緩急・間合い・崩しのタイミングなどを、状況に応じて調整できるようになります。「技をかける」から「技が起こる」へと、身体の感覚が移り変わる過程です。型から一歩離れ、流れの中で技が活きるようになるのがこの段階です。

先ほどの少女の例では、小手返しを試みたものの体格差のある相手を完全には倒せませんでした。しかし、男の膝が落ち、腰が崩れるほどの崩しが効いていたという点で、これはまさに「破」の段階。型が状況を動かす力として発揮された好例です。

【離】──型から離れ、即応する

そして最後が「離」。ここまでくると、技を出そうという意識すらないまま、身体が自然に状況に即応して動くようになります。この段階では、もはや型に頼らず、相手との関係性や自分の状態に応じて、その場に必要な動きが生まれます。型から離れても理から外れない──自由であって本質的。それが「草」に通じる動きです。

少女は、倒しきれなかった相手に対し、小手返しを途中で止め、咄嗟に横面を平手で打ち、離脱に成功しました。これは教えられていた動きではなく、その場で必要だったからこそ出てきた反応でした。技の応用でも形の再現でもない。「今、この状況をどう切り抜くか」という問いに対して身体が自然と答えた──ここに楽心館が大切にする「離」の境地が現れています。

守・破・離は「身体を磨く」ための三段階

このように、「守・破・離」あるいは「真・行・草」という三段階は、単なる技術の進化ではなく、人間の身体そのものが生きた智慧を宿していく過程です。楽心館では、こうした段階を一人ひとりのペースで辿ることを尊重し、技の形から流れ、そして本質へと深めていく稽古を続けています。

そして何より──実際に役に立つ身体、咄嗟に動ける身体を育てること。それこそが合氣の本質であり、私たちが武道に求める“生きた学び”なのです。

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